皮膚カンジダ症がよくわかる疾患ガイドページ
皮膚カンジダ症は、カンジダという真菌によって引き起こされる皮膚感染症です。この真菌は通常、人間の体内に存在していますが、免疫力の低下や湿度の高い環境などが原因で過剰に増殖し、感染を引き起こすことがあります。感染した皮膚は赤くなり、かゆみや発疹、時にはびらんを伴うことがあります。皮膚カンジダ症は、特に温かく湿った部位によく見られ、適切な治療により改善が期待できます。
このガイドでは、皮膚カンジダ症の原因、典型的な症状、治療法、予防策について詳しく説明し、患者がこの状態をよりよく理解し、適切に対処するための情報を提供します。
皮膚カンジダ症(ひふかんじだしょう)とは?

皮膚カンジダ症は、カンジダという真菌が原因で起こる皮膚感染症です。カンジダは通常、人の皮膚や体内の正常な菌として存在していますが、何らかの理由で過剰に増殖すると、皮膚カンジダ症を引き起こします。この疾患は、特に体の折り目のような暖かく湿った場所に好発し、赤みがかった発疹、かゆみ、刺激感、時には白いかすみ(カンジダ菌によるもの)を伴うことが特徴です。
皮膚カンジダ症のリスク要因には、免疫力の低下、糖尿病、長期間の抗生物質やステロイド薬の使用、過度の汗や摩擦、不適切な衛生状態などがあります。これらの条件は、カンジダ菌の異常増殖を促すことがあります。
一般的な治療方法としては、抗真菌薬の局所塗布が行われます。症状が重い場合や広範囲にわたる感染には、経口抗真菌薬が処方されることもあります。また、感染の再発を防ぐためには、リスク要因を管理し、皮膚を清潔で乾燥させることが重要です。
皮膚カンジダ症は治療可能な疾患であり、適切なケアと予防策を講じることで、症状を効果的に管理することができます。
紅斑やジュクジュクとしたびらんができる皮膚カンジダ症の症状

発症が多い部位 | 脇の下、足の付け根、おしり、乳房の下 手の指と指の間 爪の周り |
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自覚症状 | 患部に鱗屑の付着した紅斑が発生する。水ぶくれやかゆみ、膿を伴うこともある。 |
発症の条件 | 以下の要素に当てはまる時期に発症しやすい。 ・夏場 ・水仕事が多い |
間違えやすい疾患 | 体部白癬(白癬菌を病原体とする真菌感染症、身体にO字形の紅斑が生じる) |
皮膚カンジダ症の主な症状は、患部中心から拡がるように生じる紅斑(ピンク色や赤色の斑点)です。紅斑は地図状のいびつな形をしており、境界がはっきりしていません。鱗屑(ポロポロと剥ける白い皮)が付着しているのが特徴です。紅斑の周囲には、水ぶくれや膿、ポツポツとした小さい紅斑が多発することもあります。
皮膚カンジダ症の患部では、時として表面がジュクジュクとしたびらんを呈することもあります。見た目以外の皮膚カンジダ症の症状としては、軽いかゆみや痛みが生じることもあります。
皮膚カンジダ症が起こりやすい部位は、肌と肌が擦れ合う場所です。好発部位として、脇の下や太ももの付け根、おしり、乳房の下などが挙げられます。これらの場所は摩擦によって常に肌が刺激を受けるだけでなく、汗がこもって蒸れやすくなります。高温多湿を好むカンジダ菌にとって繁殖に最適な環境です。
皮膚の摩擦によって生じる皮膚カンジダ症は「カンジダ性間擦疹」と呼ばれます。
皮膚カンジダ症のもうひとつの好発部位として、手の指と指の間が挙げられます。
手洗い後などに水が溜まりやすい手指の間も、カンジダ菌が繁殖しやすい場所といえます。指の間に生じる皮膚カンジダ症は「カンジダ性指間びらん症」と呼ばれます。カンジダ性指間びらん症は、主婦や料理人、美容師などの水仕事に従事している方に多くみられます。
爪やその周りが皮膚カンジダ症になることもあります。
皮膚カンジダ症の中でも、爪の周囲に炎症を起こしたものはカンジダ性爪囲炎と呼ばれます。
カンジダ性爪囲炎の主な症状は、爪の周りの皮膚の腫れや発赤です。軽い痛みを伴います。患部の皮下に黄色い膿が溜まることもあります。
カンジダ菌の感染が長引くと、爪そのものに変色や変形などの症状がみられるようになります。爪の色が白濁したり、表面がデコボコしてきたりします。これはカンジダ菌の繁殖が爪の内部にまで達している状態です。
カンジダ菌の過剰な増殖が皮膚カンジダ症の原因
皮膚カンジダ症の病原体は、カンジダ属の真菌(カビの仲間)です。カンジダ菌は、もともと人の口腔内や消化管に生息している常在菌です。普段は人の身体に害を及ぼすことはありません。皮膚カンジダ症がおきる直接の原因は、カンジダ菌の過剰な増殖です。
カンジダ菌は、宿主の免疫力の低下や患部の蒸れ、菌交代現象などの要因が重なることで過剰に増殖します。
カンジダ菌の繁殖を招き、皮膚カンジダ症を発症させる原因として以下が挙げられます。
糖尿病やステロイド剤などによる免疫力の低下。
皮膚カンジダ症の合併を招くおそれのある疾病として、糖尿病やAIDS、悪性腫瘍(がんなど)などが挙げられます。これらの疾病は人の免疫機能を停止または低下させることで、カンジダ菌に対する抵抗力を弱めてしまいます。
疾病以外にも、ステロイド剤の外用や放射線療法、抗がん剤治療などの医療行為が免疫力を低下させる原因となる場合もあります。特にステロイド剤は一般に市販されているうえ、痒みの症状の緩和に用いられます。かゆみの原因が皮膚カンジダ症であった場合、かえって症状を悪化させてしまうおそれがあるため注意が必要です。
発汗や水仕事などによる患部の蒸れ。
カンジダ菌は高温多湿の環境を好んで繁殖します。湿度が高く発汗量も増える夏場は、皮膚カンジダ症が発症しやすい季節です。特に肥満の方やオムツを着用している方、寝たきりの状態が続く方では、局所が密封されて蒸れやすくなるため注意が必要です。
水仕事を多くする方では、拭き残した水が原因で皮膚カンジダ症が発症することがよくあります。
抗菌薬の長期使用による菌交代現象。
長期間の抗菌薬の使用は、体内の常在菌のバランスを崩すことで皮膚カンジダ症を引き起こします。抗菌薬は、特定の病原体だけでなく、身体を健康に保つ役割のある善玉菌も殺菌することがあります。抗菌薬の作用によって、普段は少数しか存在しない細菌や真菌が過剰に増えている状態を菌交代現象といいます。菌交代現象によって普段カンジダ菌を抑えていた善玉菌の数が減ることで、皮膚カンジダ症が発症する場合があります。
カンジダ菌を抑える抗真菌薬が皮膚カンジダ症の治療に有効

- 皮膚カンジダ症の治療に有効な成分
- クロトリマゾール
カンジダや水虫などの真菌が原因で起こる感染症の治療に効果的です。皮膚疾患にはクリーム薬、膣カンジダ症には直接患部に届く膣錠が有効です。 - イトラコナゾール
体内に留まりやすい特性がある真菌症治療剤です。主に水虫、皮膚カンジダ症、癜風の治療に使われます。外用薬ではなかなか治らない爪水虫などに有効です。 - フルコナゾール
真菌を殺菌する作用がある治療薬です。膣カンジダの治療効果に優れており、深在性真菌症の予防にも用いられます。カンジダに起因する膣炎および外陰膣炎の症状改善に有効です。
- クロトリマゾールが配合されている商品
- カーネステンクリーム
カンジダ症の治療や再発予防に使われている塗り薬です。イミダゾール系の抗真菌薬で、日本ではエンペシドクリームという名前で知られています。 - イトラコナゾールが配合されている商品
- スポラノックス
爪水虫や爪カンジダなどの真菌症の治療薬です。3ヶ月間で爪水虫を治すことのできるパルス療法が認められている薬です。 - フルコナゾールが配合されている商品
- フォルカン
日本初の内服型の膣カンジダ治療薬であるジフルカンのジェネリックです。膣カンジダの治療に適した150mgの規格であり、たった1錠飲むだけで治療できます。
治療法の内容 | 外用または内服抗真菌薬の使用 |
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診察が行える診療科 | 皮膚科 |
施術に使用する薬 | 外用抗真菌薬(塗り薬) 内服抗真菌薬(飲み薬) |
皮膚カンジダ症の治療に用いられるのは、真菌の発育を抑制する働きのある外用抗真菌薬です。患部の清潔を保ちつつ、外用抗真菌薬の塗布を行うことで、皮膚カンジダ症は速やかに軽快します。
中でも第一選択されているのは、イミダゾール系の外用抗真菌薬です。
イミダゾール系の抗真菌薬は、皮膚カンジダ症を含めたあらゆる表在性真菌感染症に対して治療効果を示します。
皮膚カンジダ症の治療に使われるイミダゾール系抗真菌薬としては、クロトリマゾールが挙げられます。
難治性や爪の皮膚カンジダ症には飲み薬が用いられます。
皮膚カンジダ症の中でも、外用薬で完治しない症例や病変が広範囲に及んでいる症例に対しては、内服抗真菌薬が用いられます。爪または爪の周りにできるカンジダ性爪囲炎に対しても同様です。
中でも第一選択されているのは、トリアゾール系の内服抗真菌薬です。
トリアゾール系の内服抗真菌薬は、幅広い抗真菌活性を有しているうえ、副作用が少ないというメリットがあります。皮膚カンジダ症の治療に使われるトリアゾール系抗真菌薬としては、イトラコナゾールとフルコナゾールが挙げられます。
清潔さと乾燥を保って皮膚カンジダ症を予防
皮膚カンジダ症を予防するうえで大切なのは、発症のきっかけとなる環境因子を取り除くことです。
汗で蒸れやすい夏場には、こまめに汗を拭いたり、締め付けが緩く通気性に優れた服を着るなどの対策をしましょう。
就寝前には必ず入浴して、患部の清潔を保つことも皮膚カンジダ症の予防に有効です。
普段水仕事が多い方は、手が濡れた後に指の隙間までしっかりと拭くことが大切です。特に中指と薬指の間は幅が狭く、水が溜まりやすいため、注意して拭きましょう。
水仕事の中心が洗い物であれば、ゴム手袋を着用することで皮膚カンジダ症を対策できます。