テグレトールの飲み方「増量や減量、注意点、飲み合わせ」について
てんかん治療におけるテグレトールの飲み方(用法・用量)
下記の用量を守って、水またはぬるま湯と一緒に服用してください。
1回の用量 | 1/2〜1錠 (カルバマゼピンとして100〜200mg) |
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1日の服用回数 | 2回 |
てんかんの部分発作に使用する場合、1日200〜400mgを1回もしくは2回に分けて服用します。
ただし、テグレトールの有効な分量は、個人によって異なります。副作用が出る手前の分量まで徐々に増量し、通常は1日600mgまで増やしていきます。症状によっては1日の最大用量として、1,200mgまで増量できます。
テグレトールを増量しても効果が見られない場合、ラミクタールやイーケプラなど、他の抗てんかん薬に切り替えていきます。抗てんかん薬を切り替える際には、症状が悪化するリスクを防ぐため別の薬を併用します。
一般名・区分 | 商品名 | 疾患・作用 |
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ジアパゼム | セルシン | 神経症における不安、うつ病、熱性けいれん |
ホリゾン | 神経症における不安、うつ病、熱性けいれん | |
バルビツール酸系 | フェノバール | 不眠症 |
ワコビタール | 熱性けいれん | |
プリミドン | 点頭てんかん |
テグレトールの服用によって発作が悪化した場合、適応外のてんかん発作(欠神発作、ミオクロニー発作)を発症している可能性があります。かかりつけの医師に相談をしてください。
テグレトールをやめるには
テグレトールのような抗てんかん薬は、服用をやめるのが非常に難しい薬です。服用を中止(断薬)したり急激に服用量を減らすと、離脱症状として発作が連続して起こることがあります(てんかん重積状態)。テグレトールによっててんかん発作が寛解しても、急激に断薬や減薬をしてはいけません。
てんかん自体も、治療を終了する時期の判断が難しい疾患であり、医師と患者で十分に話し合って慎重に決めなければなりません。治療を終える判断基準としては、テグレトールによって発作が完全に寛解している期間が2〜5年続くことが目安です。
テグレトールは減薬によって発作が再発するリスクがあるため、再発しても差し支えのない時期を選んで減薬を開始します。減薬に要する期間として最低でも6ヶ月、一般的には1年かけて少しずつ漸減していくのが基本です。
減薬する場合は医師に相談し、様子を見ながら徐々に少しずつ減らすようにしてください。特に高齢者や虚弱者の方が減薬する場合は慎重に行ってください。
躁状態におけるテグレトールの飲み方(用法・用量)
下記の用量を守って、水またはぬるま湯と一緒に服用してください。
1回の用量 | 1/2〜1錠 (カルバマゼピンとして100〜200mg) |
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1日の服用回数 | 2回 |
双極性障害の躁状態および統合失調症の興奮状態に使用する場合、1日200〜400mgを1回もしくは2回に分けて服用します。効果がほどよく落ち着くまで徐々に増量し、通常は1日600mgまで増やしていきます。症状によっては1日の最大用量として1,200mgまで増量できます。
双極性障害の躁状態に対しては炭酸リチウム(リーマス)を服用して効果がなかった場合や副作用が強く出た場合に、統合失調症の興奮状態に対しては抗精神病薬を服用して効果がなかった場合に使用してください。
三叉神経痛治療におけるテグレトールの飲み方(用法・用量)
下記の用量を守って、水またはぬるま湯と一緒に服用してください。
1回の用量 | 1錠 (カルバマゼピンとして200mg) |
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1日の服用量 | 1〜2回 |
三叉神経痛に使用する場合、1日200〜400mgを服用します。効果がほどよく落ち着くまで徐々に増量し、通常は1日600mgまで増やしていきます。症状によっては1日の最大用量として800mgまで増量できます。
頓服薬の鎮痛剤とは異なり、三叉神経痛に対するテグレトールの目的は痛みの発作を事前に予防することです。特に三叉神経痛は食事中に咀嚼することで起こりやすくなりますので、食事の30分〜1時間前に服用するのがベストタイミングです。
テグレトールを増量してもなお痛みを抑えられないような場合、リリカやサインバルタといった強力な鎮痛剤を併用するか、外科手術による治療に切り替えます。
テグレトールを服用して全く効果が見られない場合、痛みの原因が三叉神経痛ではない可能性がありますので医師に相談をしてください。
テグレトールを飲み忘れたら?
テグレトールを飲み忘れた場合は、気がついたときに飲み忘れた分だけを飲んでください。ただし次の服用時間が近い場合は1回分を飛ばして、時間が来たら次回分のみを服用してください。
1度に2回分を飲むのは過剰摂取です。非常に危険なので絶対にやめてください。
テグレトールの飲み忘れを防ぐためには、食後に飲むなど服用時間を決めておくことが大切です。服用間隔を一定にして効き目(血中濃度)を安定させるためにも、毎日同じ時間に飲むようにしましょう。
服用にあたっての注意点
- テグレトールの注意事項
- <使用禁忌>
下記に該当する方は使用しないでください。
カルバマゼピンまたは三環系抗うつ剤に対し過敏症がある、重篤な血液障害、第�U度以上の房室ブロック、高度の徐脈(50拍/分未満)、ポルフィリン症 - <使用注意>
下記に該当する方は使用前に医師に相談してください。
心不全、心筋梗塞等の心疾患又は第1度の房室ブロック、排尿困難又は眼圧亢進、高齢者、肝障害、腎障害、薬物過敏症、甲状腺機能低下症、相互作用を招く可能性のある薬を服用中または服用する予定がある(ハロペリドールなど精神神経系用薬、ナトリウム喪失性の利尿剤、エリスロマイシンなど抗菌薬、ミコナゾールなど抗真菌薬、ニフェジピンなど循環器系用薬、プレドニゾロンなど抗炎症薬、黄体・卵胞ホルモン剤、シクロスポリンなど免疫抑制薬、イリノテカンなど抗悪性腫瘍剤、サキナビルなど抗ウイルス薬、パンクロニウムなど筋弛緩剤、ワルファリン、プラジカンテル、テオフィリン、アミノフィリン、アルベンダゾール、セイヨウオトギリソウ) - <併用禁忌薬>
下記の薬品を服用中の方は使用しないでください。
ボリコナゾール、タダラフィル(アドシルカ)、リルピビリン
テグレトールはハイリスク薬に指定されており、飲み方を間違えると非常に危険です。使用にあたっては必ず下記の注意点をご確認ください。
副作用が出やすいため注意
テグレトールは飲み始めや薬の量を増やした時に、眠気やめまい、吐き気といった副作用が起こりやすくなります。最初はできるだけ低用量から飲み始め、増量する場合は急激に増やしたりせず様子を見ながら少しずつ増やすようにしましょう。
テグレトールは強い鎮静作用があるため眠気の他にも集中力や注意力、反射運動能力の低下を起こしやすくなります。思わぬ事故にもつながりますので、服用後は車や重機の運転をしないでください。
テグレトールを飲みすぎた場合
テグレトールを飲みすぎてしまった場合、中毒症状が起こる可能性があります。眠気、吐き気、めまい、視界異常(物が二重に見える)、ふらつき、ろれつが回らないなどの症状が見られたら医師に相談をしてください。
テグレトールを気分安定薬として使用している方は、薬に対する依存や希死念慮から衝動的に過剰摂取(オーバードーズ)するケースが見られます。過剰摂取をすると急性中毒を起こし、服用から1〜3時間後にけいれんやふるえ、興奮、意識障害といった症状が起こります。
テグレトールをオーバードーズしてしまった場合は、ただちに救急車を呼んでください。その際には服用したシートを持参し、何錠飲んだか医師が確認できるようにしておいてください。
テグレトールの致死量
テグレトールの致死量は明確に定められていませんが、過剰摂取による死亡例が確認されています。
日本国内ではマウスおよびラットに対する臨床データでLD50値(被験動物の50%が死亡する用量)が算出されました。LD50値は体重1kgあたりの平均値として、マウスが3,750mg、ラットが4,025mgとなりました。
体重50kgのヒトで換算すると、およそ200,000mg(200mg錠で1,000錠分)で致死率50%という計算になります。
一方で米国FDAにおいては、成人の死亡例が確認されている最低致死量として3,200mg(200mg錠で16錠分)というデータがあります。死亡例は男女1件ずつ報告されており、24歳男性が肺炎と低酸素性脳症、24歳女性が心停止で死亡しています。
妊婦や授乳中の女性は注意
テグレトールは催奇形性の報告があり、妊婦が服用するとお腹の赤ちゃんの生育に影響を及ぼす可能性があります。このため妊娠していたり妊娠の可能性がある女性は服用に向いていません。
また、テグレトールは母乳へ移行する事も報告されているため、授乳中の女性は治療の有益性がリスクよりも優先される場合にのみ使用してください。
テグレトールと飲み合わせが悪いものは?
テグレトールには、併用禁忌薬および併用注意薬が非常に多数あります。主成分のカルバマゼピンは体内で薬を代謝する機能に大きな影響をおよぼすため、他剤との併用によって互いに作用を強めたり弱めたりします。
テグレトールと飲み合わせのある薬は市販薬も含めて種類が多岐にわたりますので、他のお薬との併用を考えている方は医師に相談をしておくのが望ましいです。
なお、よく飲み合わせが心配されているロキソニンはテグレトールとの作用関係に影響がないので、併用しても問題ありません。
併用禁忌薬
2020年3月の改訂によって、テグレトールの併用禁忌薬は3剤から10剤に増えました。
テグレトールと一緒に飲んではいけない薬として、以下の10剤が併用禁忌となります。
- 併用禁忌薬の詳細
- <抗真菌薬>
ボリコナゾール(ブイフェンド) - <肺動脈性肺高血圧症治療薬>
タダラフィル(アドシルカ)、マシテンタン(オプスミット) - <急性冠症候群治療薬>
チカグレロル(ブリリンタ) - <抗ウイルス薬>
グラゾプレビル(グラジナ)、エルバスビル(エレルサ)、ダクラタスビル・アスナプレビル・ベクラブビル(ジメンシー)、アスナプレビル(スンベプラ) - <抗HIV薬>
リルピビリン(エジュラント)、ドルテグラビル・リルピビリン(ジャルカ)
これらの薬はいずれもテグレトールとの併用によって代謝が促進され、血中濃度が下がって作用が弱まります。該当する薬を服用している方はテグレトールを使用できませんのでご注意ください。
主な併用注意薬
テグレトールの併用注意薬の中でも、テグレトールと関連性が高い薬および併用する可能性が高い薬は以下のとおりです。
- 主な併用注意薬の詳細
- <抗てんかん薬>
バルプロ酸(デパケン)、フェニトイン(アレビチアン、ヒダントール)、フェノバルビタール(フェノバール)、プリミドン、ゾニサミド(エクセグラン)、クロナゼパム(リボリトール、ランドセン)、エトスクシミド(ザロンチン)、トピラマート(トピナ)、ペランパネル(フィコンパ)、クロバザム(マイスタン)、ラモトリギン(ラミクタール)、アセタゾラミド(ダイアモックス) - <気分安定薬>
炭酸リチウム(リーマス) - <抗うつ薬>
三環系抗うつ薬、抗精神病薬、フルボキサミン(デプロメール)、パロキセチン(パキシル)、セルトラリン(ジェイゾロフト)、トラゾドン(レスリン、デジレル)、ミアンセリン(テトラミド)、ミルタザピン(レメロン、リフレックス) - <抗不安・睡眠導入剤>
アルプラゾラム(コンスタン、ソラナックス)、ミダゾラム(ドルミカム) - <鎮痛剤>
トラマドール(トラマール、ワントラム)、ブプレノルフィン(レペタン)、エレトリプタン(レルパックス)、アセトアミノフェン(カロナール)、エレトリプタン(レルパックス) - <抗生物質>
クラリスロマイシン(クラリス、クラリシッド)、エリスロマイシン等のマクロライド系抗生物質
この中でもアセトアミノフェンは市販の解熱鎮痛剤・頭痛薬(バファリン、セデス、ナロン、ノーシン等)として多数の製品に含まれているので、薬局でお求めの際には必ず成分表示をご確認ください。
これら以外にもテグレトールと相互作用が報告されている薬が多数あります。何らかの疾患で医師の治療を受けていたり、他の薬を服用しているような方は、テグレトールを使用する前に医師や薬剤師に相談しましょう。
薬以外の飲み合わせ
医薬品以外でも、テグレトールとの飲み合わせに注意が必要な食品やサプリメントがあります。
サプリメントとしては抗うつ効果のあるセントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)が、テグレトールの血中濃度を下げて作用を弱めます。テグレトールの服用時には、セントジョーンズワートを含んだサプリメントや食品と一緒に飲まないでください。
お酒との飲み合わせ
アルコールは中枢神経を抑制する作用があり、テグレトールと一緒に飲むと相互作用を起こして互いの作用を強めあってしまいます。お酒が回りやすくなって泥酔による眠気やふらつきが起こりやすくなるとともに、テグレトールにおいても中毒や副作用のリスクが高まります。抑うつ症状や希死念慮がある方は、お酒に酔った勢いで衝動的にオーバードーズを起こす危険性もあります。
テグレトールの服用中は、できるだけ飲酒を控えるようにしましょう。
グレープフルーツとの飲み合わせ
グレープフルーツは、フラノクマリンと呼ばれる成分を多量に含んでおり、この成分がテグレトールの血中濃度を上げてしまいます。テグレトールの服用時には、グレープフルーツを含んだ飲料と一緒に飲まないようにしましょう。
グレープフルーツ以外の柑橘類でフラノクマリンが高いのはスウィーティー、メロゴールド、バンペイユ等です。みかん類やレモン類はフラノクマリン含有量が少ないので少量であれば安全です。
服用中は定期的な検査を
テグレトールでの治療にあたっては、服用前に肝機能や腎機能の検査が行われます。テグレトールは肝臓で代謝されて腎臓から排出される薬であり、これらの機能によって血中濃度、ひいては作用に影響を及ぼすからです。
また、服用中は上記の検査に加えて血液検査を行い、定期的に肝機能・腎機能・血中濃度の測定が行われます。
テグレトールは、治療として有効な量と中毒を起こす量が近いハイリスク薬です。治療を継続するには十分な効き目を発揮しつつ、副作用や中毒を抑える血中濃度を維持させなくてはなりません。
治療に最適な血中濃度には個人差があるため、患者ごとに病状の経過を観察しながら慎重に用量を調節して見極めなければなりません。
さらにテグレトールには薬の代謝酵素を誘導する作用があり、服用を続けていくと代謝する量が増えて血中濃度が下がる傾向があります。このため服用期間中は定期的に上記の検査を行い、血中濃度を把握しておくことが望ましいです。