タミフルの副作用「下痢、めまい、異常行動」について
タミフルの主な副作用
タミフルは一般的にインフルエンザの治療に第一選択されている薬です。治療実績も豊富で安全性の高い医薬品ですが、主な副作用として以下が報告されています。
- <主な副作用>
- 腹痛、下痢、吐き気、悪心、発疹、蕁麻疹、めまい、頭痛、不眠症、眠気、動悸、肝臓の数値上昇、低体温など。
下痢や吐き気など消化器に関連する副作用について。
タミフルの副作用の中で消化器に見られる不調は比較的発生頻度が高い傾向にあります。下痢や腹痛、悪心(吐き気)、嘔吐が主な消化器症状の副作用として報告されています。
その他には食欲不振、腹部膨満、便の異常、口腔内不快感、口内炎などが0.1%未満の頻度で確認されています。
副作用の症状 | 発現率(%) |
---|---|
下痢 | 0.91% |
悪心 | 0.53% |
腹痛 | 0.33% |
上腹部痛 | 0.24% |
嘔吐 | 0.24% |
めまいや頭痛など精神神経系の副作用について。
精神神経系の副作用には、めまいや頭痛、不眠症、傾眠(眠気)があります。その他にも、刺激に対する反応が鈍くなる感覚鈍麻や、軽度の意識障害である嗜眠(しみん)なども確認されています。嗜眠は強い刺激を与えると一時的に反応し、刺激が収まるとすぐに眠ってしまう状態であり、重症度としては傾眠と昏睡の中間に位置します。
副作用の症状 | 発現率(%) |
---|---|
浮動性めまい | 0.18% |
頭痛 | 0.18% |
不眠症 | 0.11% |
傾眠 | 0.07% |
感覚鈍麻 | 0.04% |
嗜眠 | 0.02% |
発疹や蕁麻疹など皮膚に関連する副作用について。
皮膚および皮下組織にみられるタミフルの副作用の出現頻度は全体で0.27%と低いことが知られています。
薬の副作用による発疹などの皮膚障害は薬疹と呼ばれ、通常はアレルギー反応によって引き起こされると考えられています。アレルギーの場合は服薬を中止して医師の診察を受ける必要があります。
副作用の症状 | 発現率(%) |
---|---|
発疹 | 0.20% |
湿疹 | 0.02% |
蕁麻疹 | 0.02% |
顔面感覚鈍麻 | 0.02% |
低体温などその他の副作用について。
タミフルの副作用として低体温などの全身障害やALT(GPT)などの臨床検査値異常がみられることもあります。通常は37℃程度に保たれている体温が、35℃以下となる状態を低体温といいます。臨床検査値異常ではALT(GPT)や好酸球数の増加、尿中アルブミンの陽性反応などが報告されています。
副作用の症状 | 発現率(%) | |
---|---|---|
全身障害 | 低体温 | 0.13% |
臨床検査値 | ALT(GPT)上昇 | 0.11% |
尿中アルブミン陽性 | 0.11% | |
好酸球数増加 | 0.11% |
まれに起こるタミフルの副作用
下記の副作用は出現頻度は極めて低いものの、発症すると重症化するおそれがあります。
動悸や血圧低下、蕁麻疹、息が苦しい、白目が黄色くなる、全身の皮膚が赤くなる、ただれ、水ぶくれ、口内炎、結膜炎、尿量の減少、むくみ、出血しやすい、意識レベルの低下、急に走り出す、徘徊する、幻覚が見えるなどの異変が見られる場合は、すぐにタミフルの使用を中止して医師に相談してください。
- <まれに起こる副作用>
- ショック、アナフィラキシー様症状、肺炎、劇症肝炎、肝機能障害、黄疸、スティーブンス・ジョンソン症候群、中毒性表皮壊死融解症、精神・神経症状、出血性大腸炎、急性腎不全、血小板減少、虚血性大腸炎。
ごく稀にみられる異常行動に関する報告と因果関係について。
タミフルの副作用として、異常行動の発現が注意喚起されています。2007年頃、タミフルを服用した子供に「突然走りだす」「ベランダから飛び降りる」といった異常行動が相次いで報告された事が話題になりました。当時は10代未成年に対するタミフルの使用が原則中止される事態にもなりました。
タミフルがインフルエンザによる異常行動のリスクを高めてしまうのかという点において検証がなされていますが、タミフルを使用した患者と使用していない患者で、インフルエンザの治療時にみられる異常行動の発症率に有意差は認められていません。このことから、タミフルと異常行動が直接的に関与しているとは言い切れず、因果関係に明確な結論を出すことは困難であるとされています。
タミフルの服用に関係なく、インフルエンザの発熱に伴う「熱せん妄」や「脳炎・脳症」を原因として異常行動が起きていることもあり、直接的な因果を示す結果は得られていません。
異常行動に伴う未成年への使用中止は解除
最近では、異常行動の発生にタミフルの使用は影響していないとの見方が強まっており、原則中止とされていた10代未成年への使用も2018年には解除となりました。
インフルエンザに伴う異常行動は発熱後1〜2日目に出ることが多く、大半は寝起きの際に発症しやすいとされています。タミフルの使用に関わらず、インフルエンザを発症したら少なくとも発熱後2日間は異常行動に気を付けるよう注意喚起されています。可能であれば、2階よりも1階のようにインフルエンザ患者をなるべく低い場所に寝かせるなどの対処法が有効です。
異常行動が見られずとも、幻覚や妄想、せん妄、痙攣、意識障害などの何らかの精神・神経症状が生じることもあります。
大人に異常行動が見られるケースは滅多にない
異常行動が報告された例の8割を占めるのが19歳以下の未成年です。
2007年に集計されたタミフルを服用後に異常行動がみられたという報告数は282例であり、その内訳は10歳未満が95例(34%)、10〜19歳が143例(51%)、20歳以上が44例(15%)でした。20歳以上の大人に異常行動の副作用が見られることは稀であることが分かります。なぜ異常行動の発現率に年齢差が生じるのかについては、よく分かっていませんが、発達途中である子供の脳は、大人と比べて不安定であることが関係していると考えられています。
副作用と誤解されるインフルエンザの症状
タミフルは、ウイルスの増殖を抑制して症状の悪化を防ぐことで、回復を早める薬です。発熱や体の痛みなどの不調を、直接的に和らげる効果はありません。服薬後もしばらくはインフルエンザの症状が続くため、体の不調を薬の副作用によるものであると勘違いしてしまう方もいます。
特にインフルエンザによる発熱は、一度下がった後に再び上昇する二峰性を示すことが典型的とされています。
タミフルを服用した際に2度目の発熱が生じた場合、あたかも薬の副作用で熱が上がったように感じてしまいます。実際にはタミフルカプセルの臨床試験からは発熱の副作用は確認されていませんので、副作用として発熱が生じる可能性は低いといえます。
発熱以外には寒気や筋肉痛、頭痛、倦怠感といった全身症状や、のどの痛み、鼻水や鼻づまり、咳といった呼吸器症状がインフルエンザにおいて出現します。これらの症状はタミフルカプセルの副作用と判別が難しいケースがありますので、医師の指示がなく自己判断で薬を飲むのを止めないように注意してください。頭痛や咳、寒気に類似する症状はタミフルカプセルの副作用として報告されていますが、のどの痛みや倦怠感などは確認されていません。