クレストールの副作用「筋肉痛、肝機能障害、太る」について
クレストールの主な副作用
クレストールは血中のコレステロール値を低下させて動脈硬化性疾患を予防する薬です。副作用として筋症状や肝臓に関連する症状などが見られます。クレストールの主な副作用として以下の症状が報告されています。
- <主な副作用>
- 筋肉痛、CK(CPK)上昇、肝機能異常、腹痛、吐き気など。
筋肉痛などの筋・骨格系に関する副作用について。
クレストールなどのスタチン系薬剤は筋肉痛などの筋・骨格系症状の副作用が広く知られています。筋肉痛は筋痛や繊維筋痛などに細分化でき、クレストールの副作用としては筋痛が比較的多く確認されています。
症状 | 症例数 | 発現率 |
---|---|---|
筋痛 | 331 | 3.19% |
筋痙縮 | 92 | 0.89% |
関節痛 | 91 | 0.88% |
四肢痛 | 69 | 0.66% |
背部痛 | 34 | 0.33% |
健康な中高齢者を対象にして17ヶ月間の筋症状出現率を調査したところ、クレストールの有効成分であるロスバスタチンでは16%、薬効を持たないプラセボでは15.4%でした。プラセボでもロスバスタチンとほぼ同等の頻度で筋症状が確認されていることから、筋症状がクレストールの副作用によるものなのか判断する必要があります。
十分な臨床データがあるわけではありませんが、クレストールの副作用による筋症状は抗酸化物質であるコエンザイムQ10を摂取することで軽減あるいは消失が期待できると考えられています。
筋肉痛が現れる部位と筋・骨格系の副作用が見られる期間
クレストールの副作用による筋肉痛は、大腿部(太もも)やふくらはぎ、上腕などの大きな筋肉に現れる傾向があります。また左右対称に痛みが生じることが多いという点も特徴です。
筋肉痛の副作用は多くの場合、服用開始から4ヶ月以内に見られます。クレストールの使用を中止すると2週間ほどで消失して、再開するとまた症状が現れます。
筋症状に関わる検査値異常が確認されています
副作用として、筋症状に関わる臨床検査値であるクレアチンキナーゼ(CK)の異常が確認されることがあります。CKは筋肉中に存在し、筋細胞に異常があると血中濃度が上昇しますが、運動などにより一時的に数値が高くなることもあります。一般的にはCKの値が600を超えると服薬の中止を考えます。
臨床試験では1.65%の患者にCK上昇の副作用が報告されています。CKの上昇は単体では大きな問題となることはほとんどありません。CK上昇に加えて筋肉痛や脱力感、血中および尿中のミオグロビン上昇を伴う場合は、重大な副作用である横紋筋融解症が疑われるため適切な処置が必要となります。
肝障害が心配される肝検査値異常の副作用について。
肝臓に集中的に作用するクレストールでは、肝機能に関する副作用が見られます。発売後の使用成績調査では肝機能異常が1.02%の頻度で報告されています。
肝機能の異常を示す主な臨床検査値は、アラニン・アミノトランスフェラーゼ(ALT)とアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)です。肝臓に多く含まれるALTおよびASTは肝臓がなんらかの理由でダメージを受けると血液中に出てきて数値が高くなります。
血中のビリルビンという成分の数値が上昇することでも肝臓の異常を察知できます。
クレストールの服用により、ALTやビリルビンまたはその両方が大きく基準値を上回るようであれば、服薬の中止や肝臓専門医への受診を勧められることがあります。ALTが基準値上限の3倍(90U/L)以内且つ、ビリルビンが基準値上限の2倍(2.4mg/dL)以内であれば、そのまま治療を継続するか、他のスタチン系薬剤に切り替えます。
めまいや耳鳴り、脱毛などその他の副作用について。
筋痛や腎機能異常と比べて低頻度ではありますが、耳鳴り、うつ、血尿、めまい、血糖値、脱毛などもクレストールの副作用として報告されています。いずれもすぐに副作用と気づける症状ではありませんので、クレストールの服用後に少しでも異変を感じた場合には、医療機関を受診しましょう。
耳鳴りや回転性めまいなどの副作用
臨床試験では耳鳴りが0.1%、回転性めまいが0.12%の頻度で確認されています。耳鳴りが高い頻度で起きるまたは持続する方、目が回るようなめまいが起きる方では、副作用が疑われます。これらの聴覚や三半規管に関する副作用に関しては、耳鼻科が専門となります。
頭痛やうつ、浮動性めまいの副作用
頭痛が0.97%、うつ病が0.07%、浮動性めまいが0.45%の頻度で報告されています。
浮動性めまいとは、身体が浮いたように感じる乗り物酔いに似ためまいの症状です。これら精神神経系の副作用に関しては、心療内科が専門となります。
脱毛や発疹などの副作用
クレストール服用者の0.17%に脱毛症が見られています。毛髪に関しては貧毛症や毛質異常も副作用として報告されています。体毛に関するトラブルは皮膚科を受診するのが一般的です。かゆみ、発疹などの皮膚症状が出現した際にはアレルギーが疑われますので、クレストールの使用をただちに中止してください。
血尿や頻尿などの副作用
血尿と頻尿がそれぞれ0.06%の頻度で報告されています。これら泌尿器科の領域にあたる副作用は、腎臓の機能に異常が生じることで発生している可能性があります。
日本国外のデータによると、クレストールを通常用量を超えて服用した際に蛋白尿や血尿の発生頻度が上昇したと報告されています。このデータでは承認外の用量が投与されていますが、承認されている用量でも増量時には副作用の出現に注意してください。
血糖値に関する副作用
0.04%の頻度で高血糖が発現しています。クレストールを服用すると稀に血糖値および血糖コントロールの目安となるHbA1c値が上昇することがあり、高血糖と診断されることがあります。
まれに起こるクレストールの副作用
低頻度ではありますが、クレストールの使用により下記の副作用が発症する恐れがあります。それぞれの自覚症状に注意して、異常が確認された場合は服用を中止して適切な処置を受けてください。
- <まれに起こる副作用>
- 横紋筋融解症、肝機能障害、肝炎、黄疸、間質性肺炎、過敏性症状、ミオパチー、多形紅斑、末梢神経障害、免疫介在性壊死性ミオパチー、血小板減少
手足のこわばりやしびれ、脱力感、筋肉痛、筋力の低下、尿が赤褐色になる、筋痙縮などの症状がいくつか同時に見られた場合は、横紋筋融解症、ミオパチー、免疫介在性壊死性ミオパチーのいずれかを起こしている可能性があります。
肝炎・肝機能障害・黄疸は肝臓の異常により発症します。肝臓に異常があると体がだるい、吐き気、食欲不振、皮膚や白目が黄色くなるなどの症状が見られます。
その他には、出血が止まりづらくなる血小板減少、発熱や発疹があらわれる過敏症状、咳や息切れを起こす間質性肺炎、手足に力が入らなくなり物が掴みづらくなったり歩行時につまずくようになる末梢神経障害、斑状のむくみが多発する多形紅斑などがごくまれに出現します。
副作用で太ることはあるのか
クレストールの臨床試験において、体重増加の副作用が0.08%の頻度で報告されています。
体重増加の仕組みについては有力な説が定まっておらず、クレストールのHMG-CoA還元酵素阻害作用によるものとする考えや、服用者の摂取カロリーの増加傾向が関係しているという説があります。
薬の脂質低下作用をあてにして食事量が多くなる傾向があります。
クレストールを含むスタチン服用者では、脂質とカロリーの摂取量が多くなる傾向があるとの報告があります。
米国で、1999年から2010年までのスタチン服用者と非服用者の1日あたりの食事量を調査したところ、スタチン服用者のカロリー摂取量は約190kcal、脂質摂取量は約10mg増加しているのに対して、非服用者では増加していないことが分かりました。1999年〜2000年にはスタチン服用者のカロリーおよび脂質摂取量は非服用者よりも少なかったことから、食事量の増加はスタチンによるものではなく、薬のLDLコレステロール低下作用をあてにして食事療法を疎かにしている可能性が考えられています。
クレストールは肥満治療の薬ではありません。飲んでいるだけで痩せるという誤った認識で食事や運動療法を怠ってしまっては、かえって太ってしまいます。