アルダクトンの効果「作用機序とニキビへの有効性」について
アルダクトンの効果・効能
- 効能・効果
- 高血圧症(本態性、腎性など)、心性浮腫(うっ血性心不全)、腎性浮腫、肝性浮腫、特発性浮腫、悪性腫瘍に伴う浮腫及び腹水、栄養失調性浮腫
- 原発性アルドステロン症の診断および症状の改善
アルダクトンは有効成分にスピロノラクトンを配合した利尿薬です。
スピロノラクトンは、アルドステロンというホルモンの働きを抑制します。腎臓でナトリウムと水分の排泄を促進することで、むくみや血圧の上昇を改善します。
アルダクトンは、高血圧症や浮腫(むくみ)、原発性アルドステロン症などの治療に用いられます。
アルダクトンの作用機序
アルダクトンは、アルドステロンというホルモンの働きを抑制することで効果を発揮します。
アルドステロンには、原尿(尿のもと)からナトリウムと水分を再吸収しつつカリウムを排出する働きがあります。アルダクトンは、アルドステロン受容体を阻害することで、アルドステロン作用を抑えます。
アルドステロンの働きをブロックすることにより、カリウムを体に留めたまま、余分なナトリウムと水を排出することができます。
アルダクトンの各適応症に対する臨床成績と効果
高血圧症に対する臨床成績と効果
疾患名 | 総数 | 有効数 | 有効率 |
---|---|---|---|
本態性高血圧症 | 537人 | 314人 | 58.5% |
腎性高血圧症その他 | 13人 | 3人 | 23.1% |
妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症) | 10人 | 9人 | 90.0% |
高血圧症とは、安静時でも慢性的に血圧が高い状態を指します。
高血圧症になると、血管にかかる圧力が高まります。血管の柔軟性が失われた状態が動脈硬化です。動脈硬化の進行は、脳卒中や心疾患といった、重大な疾患につながる恐れがあります。
高血圧症の治療には生活習慣の見直し、そして降圧薬などを用いた薬物療法が行われます。
主な降圧薬は、Ca拮抗薬、RA系阻害薬、利尿薬、β遮断薬が挙げられます。利尿薬は尿の量を増やして循環血液量を減らすことで、血圧を下げる効果があります。
高血圧症にアルダクトンを用いる際は、一般的な利尿薬と併用し、カリウムを保持するために補助的に使用することが多いです。
浮腫(むくみ)に対する臨床成績と効果
疾患名 | 総数 | 有効数 | 有効率 |
---|---|---|---|
肝硬変症 | 391人 | 320人 | 81.8% |
うっ血性心不全 | 261人 | 212人 | 81.2% |
ネフローゼ症候群 | 35人 | 27人 | 77.1% |
特発性浮腫 | 11人 | 10人 | 90.9% |
浮腫(むくみ)は、皮下組織にある間質液が、過剰にたまった状態をいいます。浮腫の原因は、腎臓病、リンパの流れの悪化、薬剤性など様々です。原因不明で起こる特発性浮腫などもあります。
浮腫の治療は、原因となる疾患の改善が基本です。場合によっては、利尿剤を用いた治療方法がとられます。アルダクトンは心性浮腫、腎性浮腫、肝性浮腫、特発性浮腫、栄養失調性浮腫、悪性腫瘍に伴う浮腫および腹水に効果を発揮します。
アルダクトンにはダイエットの効果がある?
不要な水分が体内に滞って体重増加が起きている場合は、減量効果がみられる可能性があります。これは体内の水分量が体重にも影響しているためです。ただし、アルダクトンに脂肪を燃焼させる効果はありません。
原発性アルドステロン症に対する臨床成績と効果
疾患名 | 総数 | 有効数 | 有効率 |
---|---|---|---|
原発性アルドステロン症 | 185人 | 174人 | 94.1% |
原発性アルドステロン症は、アルドステロンが副腎から過剰に分泌され、高血圧や低カリウム血症を起こす疾患です。低カリウム血症がある場合は、筋力低下、不整脈といった症状が現れる場合があります。
左右両側の副腎に原因がある場合は、薬物治療が推奨されています。アルドステロンを抑制できるアルダクトンは、第一選択薬になっています。片側の副腎に原因がある場合は、摘出手術も検討されます。
アルダクトンはニキビに効果がある?
アルダクトンのニキビに対する明確な効果は証明されていません。尋常性痤瘡(ニキビ)治療ガイドラインでも、ニキビに対してスピロノラクトンの内服は推奨されていません。推奨度はC2(十分な根拠がないので推奨できない)と明記されています。また、日本国内ではアルダクトンを使用したニキビ治療も、保険適用外となっています。
ただし、アルダクトンが男性ホルモンを抑制する効果は認められています。アルダクトンの有効成分は、ジヒドロテストステロン受容体と結合することで、血中のテストステロン(男性ホルモン)濃度を減少させます。男性ホルモンを抑制することで、過剰な皮脂の分泌を抑えることができます。 皮脂の過剰分泌に起因するニキビに対し、一定の効果があると考えられます。
そのため、男性ホルモンが原因となっているニキビに限っては、アルダクトンが有効な場合があります。実際に、ニキビの中でも難治性のものや、重症度が高いものなどにスピロノラクトン(アルダクトンの有効成分)が使用されている例は存在します。男性に対して使用すると女性型乳房の副作用が発現する可能性があります。このため、アルダクトンを用いたニキビ治療は女性に対して検討されます。
アルダクトンで女性の薄毛(FAGA)が治療できる?
上記以外でも、適応外となりますがアルダクトンは女性の薄毛(FAGA)にも効果があります。FAGAは男性ホルモンであるDHT(ジヒドロテストステロン)が大きく関係しています。DHTは髪の軟毛化(細く柔らかくなる状態)や抜け毛の原因となります。
アルダクトンはDHTの受容体と結合することで、DHTの結合を競合阻害します。
DHTの作用を弱め、軟毛化や抜け毛を防いでFAGAを改善します。
FAGAに対して有効成分スピロノラクトンを使った臨床試験も行われ、6ヶ月にわたって投与されました。その結果、FAGA患者の90%において進行が止まり、30%において髪の密度が改善しました。
アルダクトンでFAGAを治療する場合は、25~100mgの低用量を服用します。利尿作用があるため、朝や昼の服用が推奨されています。