痛風がよくわかる疾患ガイドページ
痛風は、高尿酸血症によって体内の尿酸が結晶化し、関節やその周囲の組織に沈着することで引き起こされる疾患です。この結晶の沈着は、関節の激しい痛みや腫れ、熱感といった症状を引き起こし、特に足の親指の基部に発症することが多いとされています。生活習慣の乱れ、特に肉やアルコールの過剰摂取が原因となることが多く、遺伝的な要素も関与しています。
このガイドでは、痛風の原因、特徴的な症状、治療方法、そして痛風を予防するための生活習慣の改善点について説明し、あなたが健康管理のための知識を深めることができるよう支援します。
痛風（つうふう）とは？
痛風は、体内に尿酸が過剰に蓄積し、その結晶が関節に沈着することで起こる炎症性の疾患です。尿酸は、私たちの体が古い細胞を分解したり、食べ物から摂取したプリン体を分解したりするときにできます。普通は、尿酸は血液を通じて腎臓に運ばれ、尿として体外に排出されます。しかし、尿酸が過剰に生成されたり、腎臓の排出機能が追いつかなかったりすると血液中の尿酸濃度が上がり、結晶として体内に留まるようになります。
痛風は特に足の親指の基部の関節に症状が現れやすく、「痛風発作」と呼ばれる急激な痛み、赤み、腫れ、熱感を伴います。この発作は突然始まり、数日から数週間続くことがあります。
原因としては、肉やアルコールなどプリン体を多く含む食品の過剰な摂取、肥満、遺伝的要因などがあります。また、痛風は高血圧や糖尿病、高脂血症など他の生活習慣病とも関連が深いとされています。
治療には、発作時の痛みを和らげる薬、尿酸の生成を抑える薬、尿酸の排出を促す薬などがあります。さらに、プリン体の多い食品の摂取制限や体重管理、規則正しい生活を心がけることも大切です。痛風は適切に管理すればコントロールできる病気ですので、症状があれば早めに医師の診断を受けましょう。
強い痛みが足の親指や足首・膝などに現れる
痛風の主な症状は、患部の痛みや腫れ、発熱です。その場から動けなくなるほどの強烈な痛みを感じます。1〜2時間ほどかけて患部が腫れ、発熱します。その後、24時間以内に痛みのピークを迎え、徐々に改善していきます。
最も症状が出やすい部位が、足の親指の付け根です。加えて足の甲や足首、かかと、アキレス腱、膝なども発症しやすい部位です。主に足に症状が出やすいですが、手首や肘に生じることも少なくありません。
痛風発作は、発症後1〜2週間が経つ頃には自然に改善します。しかし、尿酸が結晶化する状態を放置すると、再び痛風発作が起きます。発作と鎮静を繰り返すと、重度の腫れや腎臓結石、尿管結石など症状が悪化する恐れがあります。
初期症状はいきなり激痛から始まる
痛風の症状は、ある日突然起きる激痛から始まります。初めて痛風発作を体験する人は、何の前触れもなく強烈な痛みに襲われます。
なぜなら、痛風の前段階である高尿酸血症には、自覚症状がありません。高尿酸血症を放置すると、関節に尿酸の結晶がたまります。この結晶が何らかのきっかけで剥がれ落ちた時、急激に関節炎が起こるのです。
患部にピリピリ感などの前兆を感じることもある
基本的に突然起きる痛風ですが、何度か発作を繰り返している人は発症の前兆を感じることもあります。前兆として多いのは、患部に感じるピリピリ感・ムズムズ感といった違和感です。発作の前兆は夜間に起こりやすい傾向があります。
前兆を感じた時点ですぐに薬を服用することで、痛風発作の発症を防げることもあります。前兆期に飲むべき薬は「コルヒチン0.5mg」です。足の親指を始めとした関節に上記の違和感を覚えたら、すぐに1錠を服用します。
プリン体の過剰生成や過剰摂取が痛風を引き起こす
痛風の直接の原因は高尿酸血症です。高尿酸血症は、血液中の尿酸濃度が高くなり、7.0mg/dlを超えた状態の名称です。尿酸は血液に溶けることで体外に排出されますが、濃度が7.0mg/dlを超えると排出が追いつかなくなります。残った尿酸が次第に関節にたまっていき、痛風発作の引き金となる尿酸結晶が作られます。
高尿酸血症を招く要因としては、以下が挙げられます。
- 肥満
- ストレス
- 激しい運動
- プリン体の多い食事の摂り過ぎ
- アルコールの飲み過ぎ
肥満や激しい運動がプリン体の過剰生成を招く
高尿酸血症の誘因となるのが、プリン体の過剰生成です。プリン体は身体のエネルギーとして利用される成分であり、7〜8割が体内で生成されています。プリン体は排泄される際に尿酸に分解されますので、過剰な生成は尿酸値の上昇につながります。
プリン体の過剰生成を招くのが肥満体質や激しい運動です。特に筋力トレーニングのような高い負荷がかかる運動では、プリン体が大量に作り出されます。肥満はプリン体を慢性的に増加させるリスクがあるため要注意です。
食べ物からのプリン体の過剰摂取にも要注意
プリン体を気にせず食事をすると、痛風の発症リスクが高まります。プリン体は主に肉類や海産物、干物、加工食品などに含まれています。中でもプリン体を多く含む食べ物として、以下が挙げられます。
- レバー類
- 白子
- あん肝
- モツ
- カツオ
- イワシ
- ニボシ
一見すると健康維持に役立ちそうな食べ物にもプリン体は豊富に含まれています。何気ない食べ物が痛風を引き起こすリスクになるため、暴飲暴食を避け、適量の摂取を心がけることが重要です。
痛風は鎮痛剤と尿酸生成抑制薬を使って治療する
- 痛風の治療に有効な尿酸生成抑制薬
- アロプリノール
プリン体が尿酸に変化するのを防ぎ、血中濃度を低下させる効果があります。高尿酸血症を解消して痛風発作を予防します。尿路結石の発症を抑制する効果もあります。 - フェブキソスタット
プリン体を尿酸へ変える酵素を阻害します。高尿酸血症を改善して痛風発作を予防します。従来薬を上回る強力な尿酸生成抑制作用があります。
- アロプリノールが配合されている商品
- ザイロリック
代表的な尿酸生成抑制薬です。1969年から痛風や高尿酸血症の治療に利用されています。日本を含む世界100ヵ国以上で承認を受けた、実績ある尿酸生成抑制薬です。 - フェブキソスタットが配合されている商品
- フェブリク錠（先発医薬品）
2011年に販売が始まった尿酸生成抑制薬です。従来薬より強力な効果がありながら、1日1回の服用で十分な効果を得られます。使い勝手に優れた尿酸生成抑制薬です。- フェブタズ
フェブリク錠と同じ有効成分を配合したジェネリック医薬品です。先発薬と同等の効き目が期待できる優れた尿酸生成抑制薬です。
痛風の治療は主に、尿酸生成抑制薬の服用と生活習慣の改善を行います。症状を解消しても、尿酸が結晶化するかぎり通風は再発します。尿酸の結晶化を防ぐためにも、尿酸生成抑制薬を飲み、適切な尿酸濃度を維持することが重要です。
痛風発作の痛みには、対処療法として鎮痛剤を使用します。NSAID（非ステロイド性消炎鎮痛薬）、ステロイド、コルヒチンのいずれかを服用します。第一選択薬にはNSAIDが利用されています。NSAIDが効かない場合や頻繁に発作を繰り返すような場合には、ステロイドを服用します。コルヒチンは痛風発作の前兆期にのみ服用します。
尿酸の血中濃度は6.0mg/dL未満の状態を維持する
痛風の治療では、尿酸の血中濃度（尿酸値）を6.0mg/dL未満に維持することが大切です。尿酸結晶は一度発生すると、尿酸値を下げてもすぐには無くなりません。適切な尿酸値が維持された状態で、血液に少しずつ溶け出しながら無くなっていきます。尿酸生成抑制薬を利用する場合、尿酸値を6.0mg/dL未満に維持し、結晶を無くすことで痛風を防ぎます。
痛風の治療には、食事の工夫も必要です。尿酸生成抑制薬を服用しつつ、メニューや飲酒などを制限して偏った食生活を改善していきましょう。プリン体の摂取を減らし、尿酸濃度の維持を補助することで痛風治療に大きく役立ちます。抑制薬の服用をやめてからも尿酸濃度を維持できれば、発症前と同じように生活できます。食生活の見直しは、痛風の治療において非常に重要です。
生活習慣の改善が痛風の再発率を大きく下げる
痛風を治療しても、高尿酸血症の状態であれば治ったとはいえません。生活習慣を改善しなければいつか必ず痛風が再発します。痛風を予防するためにも、不適切な生活習慣からの脱却は必須です。特に重要なのは食事制限です。アルコールやプリン体が豊富な食べ物は再発リスクを高めます。痛風発作を慢性化させないためにも、生活習慣を見直しましょう。
尿酸値が高まると、痛風の他にも血管障害や生活習慣病などの合併症を引き起こす原因となります。健康な生活を維持するためにも、尿酸値を上げない習慣を心がけましょう。
プリン体の摂取量は1日400mgまで
プリン体は肉類や海産物をはじめ、様々な食べ物に含まれています。プリン体を恐れて過度に摂取を避けると栄養不足になり、健康を害する恐れがあります。痛風治療のガイドラインでは1日400mgまでと摂取量が定められています。制限内であれば問題ありませんので、栄養不足にならないように適量を摂取しましょう。
また、プリン体は水溶性の成分です。煮たり茹でたりするとプリン体が煮汁に溶け出し、食材に含まれるプリン体を減らすことができます。
過度なアルコールの摂取を控える
アルコールを摂取すると、体内で乳酸が増加します。乳酸は尿酸の排出を阻害するため、増加すると尿酸の排出量が減ります。排出されなかった尿酸が血液中に溜まり、尿酸値が上がります。酒の種類によってはプリン体が多く含まれており、過剰摂取に至る恐れがあります。日本酒は1合、ビールは500mlなど、1日の飲酒量を決めて飲み過ぎに注意しましょう。
水分は1日2リットル以上飲む
尿酸は尿に溶けて小便として排出されます。水分を大量に摂取して尿量を増やすことで、スムーズに尿酸を排出することができます。水分不足になると尿酸を排出できず、尿酸値が上昇することになります。1日2リットルを目安に、水かお茶を飲みましょう。
また、アルコールや糖類を含む清涼飲料水は尿酸の排出量を低下させます。飲酒でも尿量は増えますが、尿酸を減らすには不適切です。あくまで嗜好品として楽しみつつ、飲み過ぎには注意しましょう。