ネキシウムの効果「逆流性食道炎に対する有効性や効き目の強さ」について
ネキシウムの効果と効能
- 効能・効果
- 逆流性食道炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、Zollinger-Ellison症候群、非ステロイド性抗炎症薬投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制、低用量アスピリン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制
- <下記におけるヘリコバクター・ピロリの除菌の補助>
胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、早期胃癌に対する内視鏡的治療後胃、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎
ネキシウムには胃酸の分泌を抑制する効果があります。
胃酸過多にともなう逆流性食道炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍などの治療において第一選択薬にされています。
過剰に分泌された胃酸は、食道に逆流したり、胃粘膜を傷つけたりします。ネキシウムの効果によって胃酸が抑制されることで、胸焼け・呑酸(どんさん)・吐き気・胃痛・胃もたれなどの症状が軽快します。
ネキシウムは「プロトンポンプ阻害薬」に分類される薬です。胃壁にあるプロトンポンプという部分に作用して、胃酸の分泌をブロックします。プロトンポンプとは、胃酸が分泌される過程における最終段階で機能する最も大事な部分です。ネキシウムはプロトンポンプの機能を阻害し、胃酸の分泌を強力にストップさせる働きをします。
逆流性食道炎患者の87.3%に治療効果が確認されました。
逆流性食道炎に対するネキシウムの有効性は、臨床試験によって実証されています。
臨床試験では逆流性食道炎の患者189例に対して、ネキシウム20mgが1日1回8週間投与されました。臨床試験の結果、患者全体の87.3%(165/189例)に治癒が確認されました。逆流性食道炎の患者のおよそ9割が、ネキシウムの効果によって症状が改善された結果が得られています。
維持療法では92%に再発抑制効果を発揮
再発を繰り返す難治性の逆流性食道炎には、長期的な服薬を続ける維持療法が選択されます。
維持療法においても、ネキシウムを用いた臨床試験が行われており、効果が検証されています。試験では難治性の逆流性食道炎の患者188例に対して、ネキシウム20mgが1日1回、24週間にわたって投与されました。
臨床試験の結果、92%の患者では期間中に再発はありませんでした。再発が起きたのはわずか14例に留まりました。ほとんどの患者において、24週間のあいだ再発を抑える効果が確認されています。この結果から、難治性の逆流性食道炎の維持療法におけるネキシウムの有効性は証明されました。
食べ過ぎによる胃もたれには逆効果
食べ過ぎによる一時的な胃もたれ・むかつきは、消化不良が原因で生じていることが考えられます。
ネキシウムで胃酸を抑えてしまうと消化不良が悪化して、下痢や腹痛が起きる可能性があります。
ネキシウムは胃酸過多に伴う持続的な症状の抑制に効果的な薬です。空腹時や食間でも胃痛や胸やけ症状が持続する場合に効果を発揮しますが、食べ過ぎなどに起因する胃もたれの症状緩和には適していません。
効果が出るまでの時間について
服用してからおよそ2時間で最高血中濃度に達します。
ネキシウムを飲んでから効果が出るまでの時間には個人差があります。血中の成分濃度は服用から約2時間で最高値に達します。胃酸を抑えるネキシウムの効果は飲んでから数時間で徐々に発現すると思われます。
服用してから1.5日で逆流性食道炎の胸焼けが完全に消失します。
ネキシウムを服用してから「胸焼け」が完全に消失するまでの時間が臨床試験で検証されています。試験では、逆流性食道炎の患者100例に対してネキシウムが投与されました。この結果、胸焼けが消失するまでにかかった時間は投与開始から1.5日(中央値)でした。飲み始めてからおよそ一日半が経過したあとは、逆流性食道炎の再発が起こらなくなると考えられます。
効果の強さはどれくらいか
市販されているH2ブロッカーよりも強力です。
ネキシウムは、プロトンポンプ阻害薬と呼ばれる種類の薬です。プロトンポンプ阻害薬は、最も強力な胃酸分泌抑制剤です。
胃酸を抑える薬には、市販薬としてガスター10などの「H2ブロッカー」と呼ばれる種類の薬もあります。ネキシウムの強さは、H2ブロッカーを大きく凌ぎます。
H2ブロッカーは、酸分泌を促す刺激物質の1つであるヒスタミンを阻害します。これに対して、プロトンポンプ阻害薬は酸分泌の最終過程であるプロトンポンプを妨げます。つまり、プロトンポンプ阻害薬ではヒスタミンを含め、酸分泌を促す全ての刺激物質をブロックすることができます。H2ブロッカーでは阻害できない刺激物質による胃酸分泌も抑制するため、より強力な効果を発揮します。
ネキシウムと他のプロトンポンプ阻害薬の強さの比較。
ネキシウムの他にもプロトンポンプ阻害薬には様々な種類があります。代表的な薬として、タケキャブ(ボノプラザン)・タケプロン(ランソプラゾール)・パリエット(ラベプラゾール)などが挙げられます。タケキャブを除き、ネキシウムと他のプロトンポンプ阻害薬とで効果の強さに大きな差はありません。
最も強いプロトンポンプ阻害薬はタケキャブ
タケキャブは最も新しく開発されたプロトンポンプ阻害薬であり、唯一ネキシウムを凌ぐ強さが期待できる薬です。従来のプロトンポンプ阻害薬では酸による活性が必須ですが、タケキャブはこれを必要としません。このことから、高い即効性を有する点がタケキャブの大きな特徴です。とはいえ、薬との相性には個人差がありますので、一概にネキシウムよりもタケキャブの方が強いとはいえません。
ネキシウムが効かないときは?
食前2時間前の服用で効果が最大限発揮されます。
逆流性食道炎に対してネキシウムが効かなかった場合、まずは服用の時間を工夫してみましょう。
胃酸は食事中に多く出ます。食事のタイミングで薬が効くように、食前2時間ほど前にネキシウムを飲むと効果的です。
用量の調整や漢方を併用する方法
飲む時間を工夫しても効かない場合には、医師に相談して用量を増やす必要があります。特に長期的な維持療法では、最低用量となる10mgから飲み始めることになっています。十分な効果が得られないことがあるので、10mgで効かない場合には20mgまで増量することが可能です。
用量の増量と同じくらいの上乗せ効果が期待できる方法として、漢方の併用が挙げられます。特に消化管運動を改善する作用のある「六君子湯」という漢方が有用です。併用により、プロトンポンプ阻害薬の用量を倍に増やすのと同等の改善率が期待できるという研究報告があります。
最終的には他の薬に切り替える
それでも効果が見られないのであれば、別の種類のプロトンポンプ阻害薬(タケキャブなど)に変更する選択もあります。ただし、ネキシウムで全く効果が得られない場合には、同時に他の病気も疑う必要があります。
ネキシウムが効かない場合には別の疾患である可能性も考えられます。
胸焼けを起こす病気は、必ずしも逆流性食道炎であるとは限りません。その他に考えられる疾患として、食道運動障害や食道の知覚過敏などが挙げられます。これらの疾患疾患では物を飲み込む力が弱まっていたり、食道粘膜が酸に対して敏感になっています。逆流性食道炎と同様の症状が起こりますが、胃酸の分泌量は関係ありません。胃酸を抑えるネキシウムのような薬では、十分な治療効果が得られません。
胸焼けを生じる疾患は、上記した以外にも様々な種類があります。精密検査でないと判明しないこともありますので、別の疾患が疑われる場合は食道外科などの専門の医療機関を受診してください。
ネキシウムをやめたら逆流性食道炎は再発するのか
ネキシウムの効果はあくまで症状の抑制です。病気を治す効果はありません。薬を飲んでいるあいだ胸焼けや逆流が起こらなくなってたとしても、安易に服用を中止すると効果はなくなります。食道の炎症が十分に治癒する前に服薬を止めると、胸焼けなどの症状はすぐにぶり返してしまいます。何度も再発を繰り返す難治性の逆流性食道炎の治療では、なかなかネキシウムの服用を止めることができません。
症状が軽度であれば、再発時にだけネキシウムを服用する方法に切り替えることも可能です。その場合、生活習慣を改善することで再発頻度が最小限に抑えられます。
ネキシウムがやめられるようにするには、胃酸の過剰分泌や逆流を予防する生活習慣が大切です。
- 暴飲暴食をしないこと
- 食後3時間は横にならないこと
- 下着やベルトでお腹を締め付けないこと
上記の3点は特に重要ですので、意識して生活しましょう。