炎症後色素沈着がよくわかる疾患ガイドページ
炎症後色素沈着は、皮膚に生じた炎症が治癒した後に、肌に残る暗い斑点やシミを指します。ニキビや傷、虫刺されなどの炎症が原因で発生し、特に肌色が濃い人によく見られます。この状態は美容的な問題として捉えられがちですが、人によっては心理的な影響も及ぼすことがあります。原因となる炎症を未然に防ぐこと、また発生した炎症を適切にケアすることが、色素沈着の予防と改善には重要です。
このガイドでは、炎症後色素沈着の成り立ち、それに伴う症状、効果的な治療法、そして日々のケアによる予防法について患者にわかりやすく解説し、健康で美しい肌を維持するための支援を目指します。
炎症後色素沈着（えんしょうごしきそちんちゃく）とは？
炎症後色素沈着は、皮膚に起きた炎症が治癒した後に、その部位に色素が沈着し、肌が暗く見える状態を指します。ニキビや虫刺され、擦り傷などの炎症が原因で、特に肌が治った後も、色素が残ってしまうことがあります。これは肌が自己修復を試みる過程でメラニン色素の生産が活発になり、結果として色素が沈着してしまうためです。
炎症後色素沈着は全ての人に起こるわけではなく、特に肌の色が濃い人ほど発生しやすいとされています。また、肌のダメージを受けた場所やその広がりによって、色素沈着の大きさや濃さは異なります。
この状態は「シミ」として肌に現れ、見た目に影響を与えるため、多くの人が改善を望みます。治療としては、ビタミンC誘導体やハイドロキノンなどの美白成分を含む外用薬の使用、レーザー治療、ケミカルピーリングなどが効果的な場合があります。しかし、これらの治療は皮膚への刺激となることもあるため、使用する際は専門医の指導のもと行うことが大切です。
予防策としては、日焼け止めの使用によるUV対策や、炎症を引き起こす原因（ニキビの悪化、無理な皮膚のこすり洗いなど）を避けることが重要です。肌への優しいケアと適切な保護を心がけることで、炎症後色素沈着のリスクを減らすことができます。
炎症後色素沈着の症状は、シミ・肝斑を消す薬で改善されます。
ニキビや湿疹の跡に残る炎症後色素沈着の症状
炎症の度合いや患部の規模によって、皮膚に残るシミの濃さや大きさ、形など症状の現われ方はさまざまです。
例えばニキビの跡に残る炎症後色素沈着である場合は、Uゾーンにできる大人ニキビであればフェイスラインに沿うように現れます。Tゾーンにできる思春期ニキビの場合はおでこや眉間に炎症後色素沈着が発症します。
ニキビや湿疹、皮膚炎などの患部で炎症が起きた後に赤みがひいて茶褐色になります。患部一帯をシミのように覆い、頬や顎などに炎症の跡が残ります。紫外線が蓄積されて発症するシミ（老人性色素班）とは異なるもので、メラニンの過剰生成が炎症後色素沈着となって現れます。
炎症後色素沈着が治る期間には症状や肌の状態により個人差があります。
炎症後色素沈着は、自然に消えていく一過性の症状ですが慢性化するとなかなか治らないこともあります。やけどによる酷い炎症やニキビが悪化して炎症が長引いた場合などには、色素沈着が数年間消えないこともあります。
また不摂生や加齢などの影響から肌のターンオーバーが乱れている場合も、色素沈着が治るまでの期間が長くなります。
慢性化している炎症後色素沈着によるシミを早急に消すには、薬を用いてターンオーバーの正常化を促すことが必要です。
メラニンの過剰な生成が炎症後色素沈着の原因
炎症後色素沈着の原因は、肌荒れや皮脂の過剰分泌による大人ニキビ、虫刺され、やけど、アトピー性皮膚炎などによる皮膚へのダメージです。あせもや湿疹に伴う痒みで掻いた跡が黒ずみになることもあります。
肌が炎症によりダメージを受けると傷ついた箇所を回復させるために皮膚の細胞が活性化します。皮膚の細胞が活性化すると、メラニンを生成するメラノサイトが刺激を受けます。メラノサイトが刺激を受けた結果、炎症を起こした箇所で、通常より多くのメラニンが生成されます。結果として肌のターンオーバーだけでは排出しきれなくなり、シミとなって肌に残ってしまいます。
炎症後色素沈着がなかなか治らない場合、スキンケアが悪化を招いている可能性もあります。
肌を擦るような洗顔やメイクを落とすついでにクレンジング剤で顔のマッサージを行うといった行為は、肌に余計な刺激を与えます。洗顔による肌の摩擦だけでなく、患部を隠すためのメイク、肌に合わない化粧品、毛抜きやカミソリなどムダ毛の処理による刺激が炎症後色素沈着を慢性化させる原因になることもあります。
肌再生を促して美白肌をつくる炎症後色素沈着の治療薬
- 炎症後色素沈着の治療に有効な成分
- トレチノイン
古い角質を剥がれやすくするピーリング効果と皮脂の分泌を抑える効果があり、シミ・肝斑の改善、アンチエイジングに役立ちます。 - ハイドロキノン
医薬品や美白クリーム、美容液などのスキンケア化粧品に使われる成分です。メラニン色素の生成を抑えて、シミを改善します。
- トレチノインとハイドロキノンが配合されている商品
- ユークロマプラスクリーム
トレチノインとハイドロキノンの合剤で最安値の美白剤です。炎症を抑えるフランカルボン酸モメタゾンも配合されており、肌への負担も少なく、シミ・肝斑の治療に効果的です。 - メラケアforteクリーム
ピーリング作用があるトレチノンと漂白作用があるハイドロキノン、炎症を抑えるフランカルボン酸モメタゾンを同時に配合しています。
なかなか治らない炎症後色素沈着の改善には、肌のターンオーバーによる自然治癒をサポートする薬物療法が有効です。クリームやジェルタイプの外用薬が用いられており、飲み薬は扱われません。
炎症後色素沈着の治療薬として効果が高いのが、ハイドロキノンとトレチノインです。
ハイドロキノンは、メラニンの生成に関わる細胞や酵素の働きを抑える成分です。炎症後色素沈着の元になるメラニンの生成が抑えられることで、徐々にシミが目立たなくなります。
トレチノインは、肌の新陳代謝を高める成分です。メラニンが排出されるまでの期間を短縮させる効果が期待できます。角質をピーリングする効果や皮脂腺の働きを抑制する効果もありますので、ニキビ肌の改善にも有効です。
それぞれ単体でもシミを消す効果の有効性が認められていますが併用することで治るまでの期間がさらに早まります。
ハイドロキノンとトレチノインを適切な比率で配合したクリームとしては、ユークロマプラスクリームが一般的によく知られており、そのほかではメラケアforteクリームなどがよく使われています。
