亀頭包皮炎がよくわかる疾患ガイドページ
亀頭包皮炎は、男性の陰部における一般的な炎症性疾患です。この状態は、亀頭と包皮に炎症が起こることにより、赤み、かゆみ、時には痛みを伴うことがあります。不適切な衛生管理や特定の感染症が原因で発生することが多く、男性なら誰でも経験する可能性があります。早期発見と正しいケアにより、亀頭包皮炎は比較的容易に管理できることが多いです。
このガイドでは、亀頭包皮炎について、その原因や症状、予防方法、さらには効果的な治療法までを解説します。これにより、患者さんが自信を持って適切に対処できるよう支援することを目指しています。亀頭包皮炎には、ウイルス性のもの(例えば単純ヘルペスウイルスによる感染症)も存在しますが、ここでは主にカンジダ性および細菌性亀頭包皮炎に焦点を当てて説明します。
亀頭包皮炎(きとうほうひえん)とは?
亀頭包皮炎は、男性の陰茎の先端部分、特に亀頭とその被っている包皮に炎症が起こる疾患です。この炎症は細菌やカンジダといった真菌の感染(カンジダ性亀頭包皮炎)、性病、アレルギー反応、または衛生状態の悪さが原因で発生することがあります。
症状としては、亀頭や包皮の赤み、腫れ、痛み、かゆみ、排尿時の違和感、時には膿や悪臭を伴う分泌物が見られます。特に衛生管理が不十分な場合や、過剰な洗浄による皮膚の刺激、性行為による物理的な刺激が原因で起こることもあります。
治療は原因に応じて異なりますが、多くの場合、適切な清潔を保つこと、抗菌剤や抗真菌剤の使用が効果的です。また、アレルギー反応が原因の場合は、刺激となる物質の特定と回避が必要です。重症化すると包皮が亀頭に癒着する包茎を引き起こすこともあるため、症状が見られた場合は速やかに医療機関を受診することが重要です。
陰茎の赤みや乾燥、かゆみ、痛みなどが亀頭包皮炎の症状

亀頭包皮炎の自覚症状は、患部のかゆみや痛み、違和感などです。
患部の見た目はカンジダ性と細菌性で異なります。
カンジダと細菌が同時に繁殖する複合型もあり、判断が難しい場合もあります。
カンジダ性亀頭包皮炎は乾燥して白いカスが出やすいのが特徴
亀頭や包皮がカサカサに乾燥してて、白いカスが多い場合はカンジダ性亀頭包皮炎が疑われます。
- 乾燥した皮膚がひび割れて、薄皮がポロポロと落ちる
- 小さな傷ができやすくなり、包皮をめくる時などに痛みを伴う
- ひび割れによる痛みのほか、亀頭や包皮にかゆみが出る
- 白色もしくは黄色がかった、腐った魚のような悪臭のあるカス(恥垢)が見られる
- 赤みは薄く、ピンク色に近いため目立たない
カンジダは体の免疫のみで抑え込むのが難しいため、再発を繰り返すこともあります。
細菌性亀頭包皮炎は赤く腫れて膿が出やすいのが特徴
亀頭や包皮が赤く腫れていたり、膿が出ている場合は細菌性亀頭包皮炎が疑われます。
- カンジダ性に比べて赤みが濃く、斑点やブツブツが生じる
- 患部がただれて黄色い膿(恥垢とは異なり、嫌な臭いはない)が出る
- 患部にさわった時や排尿した時に痛み、かゆみが出ることもある
- ひどい場合はむくんで大きく腫れ上がり、強い痛みを伴う
- 痛みのあまり包皮がめくれなくなってしまうことがある
ただし陰茎にかゆみや痛みが生じたり、尿道から膿が分泌されたりする疾患はほかにもあります。
特に性感染症の疑いがある場合には、あらゆる可能性を考慮すべきといえます。
亀頭包皮炎を放置した場合は自然治癒が難しく悪化しやすい
亀頭包皮炎を放置するべきではありません。
体の自浄作用によって自然治癒する場合もありますが、それには一定期間が必要です。
その間に傷口から雑菌が入ることで、他の感染症を合併して悪化するおそれがあります。
仮に自覚症状が治まったとしても、原因菌が完全にいなくなったとは限りません。不完全な治癒によって原因菌が残っていた場合、再発のおそれがあります。
放置せずに治療を行うことは、症状を治すだけでなく合併症や再発のリスクを抑えるうえでも重要です。
真菌や細菌の繁殖が亀頭包皮炎の原因
亀頭包皮炎を引き起こすのは、主に皮膚に常在する真菌や細菌です。
真菌であればカンジダ、細菌であれば大腸菌、レンサ球菌、黄色ブドウ球菌などが関わっています。
これらは健全な状態では悪さをしませんが、何かのきっかけで異常に増殖すると炎症を起こします。
増殖のきっかけとなりうる要因として、以下が挙げられます。
他にもカンジダは、パートナーが膣カンジダの場合に性交で感染することもあります。
カンジダや細菌が増殖する誘因はいくつかあり、同時に複数がからんでいることもあります。
①陰茎の洗い過ぎ

陰茎を洗う時に強く擦ったり、洗浄力の高いボディーソープを使ったりすると、摩擦や刺激によって皮膚に傷がついてしまいます。
その傷から雑菌が侵入して皮膚の奥で繁殖すると、亀頭包皮炎が発症してしまうのです。
また皮膚に常在している細菌まで洗い流してしまうと、常在菌のバランスがくずれて真菌が増殖しやすくなります。
②包茎

包茎は包皮の内部が不衛生で高温多湿となり、雑菌が繁殖しやすくなります。
包茎には、亀頭部分を完全に皮が覆っている真性包茎と、容易に皮をむける仮性包茎の2つがあります。
真性包茎は包皮内を洗うことが困難であるため、カス(恥垢)が溜まりやすくなります。恥垢は雑菌の温床であり、亀頭包皮炎の原因になります。
仮性包茎の場合でも、皮がずれる時に傷ができやすいため、雑菌の侵入につながります。
③免疫力の低下

免疫力を下げる誘因としては、以下が挙げられます。
- 睡眠不足
- ストレス
- 偏った食生活や不規則な食事
- お酒の飲み過ぎ
- 喫煙
- 運動不足
- 疲労や風邪など体力の低下
これらの誘因によって、免疫細胞に必要な栄養分や細胞を修復する成長ホルモンなどが不足します。
免疫細胞が弱体化すると、カンジダや細菌の増殖を制御できなくなります。
糖尿病を原因として起こる糖尿病性亀頭包皮炎
糖尿病の合併症として亀頭包皮炎(糖尿病性亀頭包皮炎)が生じることがあります。
高血糖の状態がつづくと、末梢血管が動脈硬化を起こして狭くなり、血行不良となります。
包皮に十分な血が行き渡らなくなり、皮膚の弾力が下がってもろくなります。
包皮の表面が荒れてひび割れ、傷から雑菌が入って炎症がおきることで亀頭包皮炎が生じるのです。
糖尿病性亀頭包皮炎の治療では、根本的な原因である糖尿病を改善することが優先されます。
亀頭包皮炎の治療はカンジダ性と細菌性で薬が異なる

亀頭包皮炎の治療では、抗真菌薬と抗菌薬を使い分けます。
カンジダ性と細菌性を見分け、適切な薬を使うことが大切です。
ただし、中にはカンジダ性と細菌性の複合型もあり、見ただけでは判断がつきにくい場合もあります。
使用する薬を誤るとかえって症状を悪化させてしまいかねないことから、亀頭包皮炎が疑われる場合には、必ず皮膚科や泌尿器科を受診しましょう。
カンジダ性亀頭包皮炎は抗真菌薬で治療
- カンジダ性亀頭包皮炎の治療に有効な成分
- クロトリマゾール
カンジダの感染症に対して最も推奨される抗真菌成分です。真菌の細胞膜に使われるエルゴステロールの合成を邪魔します。 - テルビナフィン
薬局で販売されている多くの水虫薬に含まれている抗真菌成分です。カンジダのほか、水虫の原因菌である白癬菌に優れた効果があります。
- クロトリマゾールが配合されている商品
- カーネステンクリーム
日本ではエンペシドクリームという製品名で販売されている塗り薬です。カンジダ感染症に40年以上の治療実績があり、優れた効果を発揮します。 - テルビナフィンが配合されている商品
- ラミシールクリーム
水虫薬として知られるテルビナフィンの先発薬で、カンジダ感染症にも使えます。こちらは処方薬としてのラミシールクリームの海外製品です。
カンジダ性亀頭包皮炎は、カーネステンクリーム(エンペシドクリーム)やラミシールクリームといった抗真菌作用のある塗り薬で治療します。
薬の効き目には個人差があり、最適な抗真菌薬も人によって異なります。
上記の抗真菌薬で改善が見られないような場合は、ニゾラールクリームやアスタット軟膏など他の抗真菌薬に切り替えます。
細菌性亀頭包皮炎は抗菌薬で治療
- 細菌性亀頭包皮炎の治療に有効な成分
- レボフロキサシン
ニューキノロン系の合成抗菌薬(抗生物質ではない抗菌薬)です。尿道炎や精巣上体炎、前立腺炎といった男性器の感染症にも幅広く有効です。 - クラリスロマイシン
14員環マクロライド系の天然抗菌薬(抗生物質)です。クラミジア感染症による尿道炎にも高い治療効果を発揮します。
- レボフロキサシンが配合されている商品
- クラビット
レボフロキサシンの先発薬で、尿路感染症や呼吸器感染症など幅広い疾患に用いられます。こちらはクラビット500mg錠の海外製品です。 - レボクイン
クラビットの海外製ジェネリックで、同等の効果をおよそ半分の値段で得られます。国内のクラビットと同じく、250mg錠と500mg錠があります。 - クラリスロマイシンが配合されている商品
- ゾクラー
クラリスおよびクラリシッドの海外製ジェネリックです。クラリスロマイシンが250mg含まれており、国内の先発薬より成分量が多くなります。
細菌性亀頭包皮炎の治療は抗菌薬の外用薬や内服薬を使います。
軽度であれば、抗菌薬の軟膏もしくは抗菌薬とステロイドを混合した軟膏が用いられます。
外用薬はゲンタシンやクロマイP、フシジンレオなどを塗ります。
重度の場合や外用薬が効きにくいような場合、内服薬を併用します。
内服薬はクラビット、クラリシッド、オゼックス、フロモックスなどを服用します。
効き目に個人差が出るため、必要に応じて薬を切り替えます。
複合型の亀頭包皮炎は内服タイプの抗菌薬と抗真菌薬で治療
カンジダと細菌の両方が繁殖している亀頭包皮炎には、抗真菌薬と抗菌薬の両方が必要です。
多くの場合、抗真菌薬の塗り薬と抗菌薬の内服薬を使って治療します。
それぞれ上記した薬を組み合わせ、必要に応じて切り替えつつ最適な組み合わせを探します。
痛みや炎症の治療にはステロイド剤が併用される
- 亀頭包皮炎に使用できるステロイド成分
- ヒドロコルチゾン酪酸エステル
炎症を抑えてかゆみや痛みを和らげるステロイド剤です。ステロイドの中では2番目に弱い「ミディアム(普通)」で、陰茎にも使えます。
- ヒドロコルチゾン酪酸エステルが配合されている商品
- ロコダーム
ロコイドの海外製ジェネリックです。ヒドロコルチゾン酪酸エステルの濃度はロコイドと同じく0.1%です。かゆみや痛みなどの症状を緩和します。
炎症によるかゆみや痛みにはステロイド軟膏が用いられます。
亀頭や包皮は皮膚が薄いため、弱めのステロイドを塗ります。
主に使われるのはロコイド、キンダベート、グリメサゾンなどです。
陰茎を細菌や真菌から守って亀頭包皮炎を予防

亀頭包皮炎の予防においては、亀頭や包皮の清潔を保ち、菌の繁殖を防ぐことが大切です。
陰茎は包皮の中も含めて、過不足なく適度に洗いましょう。
亀頭や包皮の皮膚はデリケートなので、ぬるま湯で優しく洗うのがコツ。
ゴシゴシと強くこすったり、必要以上に洗いすぎたりしないように注意してください。
お体に合わない石鹸やボディーソープは乾燥の原因となりますので、石鹸えらびも大切です。
洗ったあとは陰茎を乾かし、ムレ対策も忘れずに。下着は通気性の良いトランクスがおすすめです。
マスターベーションなどで陰茎に触る時は、汚れた手で触らずきちんと手洗いをしましょう。
性交の際には、コンドームを着用することで感染対策ができます。
免疫力の低下を防ぐには
体の免疫機能を正常に保つには、規則正しい生活をおくってストレスケアを行うことが大切です。
睡眠をしっかりとり、疲労やストレスを溜め込まないよう心がけてください。
お酒やタバコは、ほどほどにしておきましょう。思い切って断酒や禁煙をしてみるのも効果的です。
食事は1日3回、栄養バランスの取れたメニューを摂りましょう。ファストフードはできるだけ避けてください。
免疫力は、サプリメントを継続的に摂ることで体質から改善できます。
ここでは、インドの伝統医学アーユルヴェーダに基づいて作られたサプリメントの中から、免疫力アップに良い製品を紹介します。