肝斑がよくわかる疾患ガイドページ
肝斑は、主に女性の顔に現れる不均一なメラニン色素沈着による肌の変色です。紫外線への曝露、ホルモンバランスの変化、遺伝的要因が主な原因とされ、特に妊娠や経口避妊薬の使用が関連することがあります。肝斑は健康に害はありませんが、見た目の影響から自己意識やストレスを感じる人もいます。治療には、トッピング剤やレーザー治療、そして日常の紫外線対策が含まれます。
このガイドでは、肝斑の原因、症状の認識、治療法、予防策について詳しく解説し、患者がこの状態を理解し、自信を持って対処するための支援を目指します。
肝斑(かんぱん)とは?

肝斑(かんぱん)は、主に顔の頬骨の高い部分に現れる、境界のはっきりしない茶褐色の斑点です。女性に多く見られ、妊娠や経口避妊薬の使用によって誘発されることがありますが、紫外線の影響やホルモンバランスの変化も大きく関わっていると考えられています。肝斑は痛みやかゆみを伴わないため、直接的な健康被害はありませんが、見た目の問題から患者の精神的なストレスに繋がることがあります。
治療法には、美白剤やピーリング、レーザー治療などがありますが、完全に肝斑を消すことは難しく、治療後も日焼け止めを用いた徹底した紫外線対策が必要です。また、肝斑は再発しやすい特徴があります。
近年では、肝斑に対する認識の高まりと共に、治療を求める人が増加しています。特に、美容医療の技術進歩により、より効果的で安全な治療方法が開発されていることが、この傾向を後押ししています。さらに、SNSなどでの情報交換が盛んになったことも、治療を受けるきっかけとなっているようです。しかしながら、肝斑の治療には個人差が大きく、最も効果的な治療法を見つけるには専門医との十分な相談が必要です。肌の健康を守りながら、美しい肌を目指すためには、日々の紫外線対策が何よりも重要です。
シミ・肝斑を消す薬で肝斑の症状は改善されます。
薄い斑状のシミが頬を覆うように広がる肝斑の症状

発症が多い部位 | 頬骨の周辺 額 こめかみ |
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自覚症状 | 左右対称にあらわれる、輪郭のはっきりしないシミ。 |
発症の条件 | 以下の要素に当てはまる時期に発症しやすい。 ・女性ホルモンのバランスが乱れている ・強いストレスを感じている ・30~40代の女性が発症することが多い |
間違えやすい疾患 | 【老人性色素斑】 色素斑が左右対称に発症することがある |
肝斑は、ホルモンの分泌が最も盛んになる30〜40代の女性に発症する色素斑の一種です。
肝斑の症状の特徴に、左右対称に斑状で薄い褐色の色素沈着が広範囲に広がることが挙げられます。発症が多い部位は、頬骨の周辺や頬骨から頬にかけて、額、こめかみ、唇の周辺です。シミの形は、頬骨の上に三日月状に細くでる、頬骨を中心に頬全体にでる、頬と鼻の下に分かれてでる、頬からこめかみや額まで広範囲にでるなど、いろいろな発症パターンがあります。いずれの場合でも、左右対称にシミができるという特徴は共通しています。

老人性色素斑との見分け方はシミの輪郭です。
肝斑と間違えやすい疾患として、老人性色素斑が顔に左右対称に発症した場合が挙げられます。通常、老人性色素斑のシミは、大きさも発症する部位もバラバラで不規則ですが、まれに顔の左右に似たような形のシミができるケースがあります。
しかし、そのような場合でも、輪郭がはっきりしている老人性色素斑のシミに対して、肝斑のシミはぼんやりしているため、輪郭を目印にすると判断がしやすくなります。
肝斑の原因はホルモンバランスの変化
肝斑ができる原因には、ホルモンバランスの乱れが深く関わっています。シミの元はメラニンという色素です。女性ホルモンの一種であるプロゲステロンは、メラニンを増やすメラニン刺激ホルモンの分泌を促すことが知られています。体調の変化によってプロゲステロンの分泌量が増えることが、肝斑の直接的な原因だと考えられています。
肝斑の発症を引き起こす要因としては、年齢や妊娠、経口避妊薬(ピル)の内服、ストレスなどが挙げられます。最も肝斑を発症しやすい年齢は30〜40代です。女性の一生の中で最も女性ホルモンの分泌が盛んな時期であることが関係しています。通常とは異なるホルモンバランスに変化する妊娠中やピルの内服中には、特に肝斑が発症しやすくなります。ホルモンバランスの乱れを引き起こすストレスも、肝斑の引き金となります。
ホルモンバランスの乱れと同様に気を付けなくてはならないのが紫外線です。紫外線は肝斑の直接的な原因とは異なりますが、シミの元であるメラニンの過剰な分泌を促すことには変わりありません。もともと薄かった肝斑のシミが、紫外線を浴びることによって色濃く浮かび上がってしまうこともあります。実際に肝斑には、日光に当たる部位に症状が出る傾向が確認されています。
原因が取り除かれると肝斑が自然に消えることもあります。
肝斑を発症したきっかけが妊娠またはピルの内服である場合、出産後またはピルの利用終了後にシミが消えることがあります。肝斑の原因であったホルモンバランスの乱れが正常に戻ることで、新たなシミが生じなくなり、古いシミは皮膚の代謝に伴って消えていくためです。
濃いシミが定着している場合には、原因が取り除かれても長期的に持続してしまうこともあります。
明確なきっかけがなく加齢に伴って生じた肝斑の場合、閉経年齢を過ぎたあたりから徐々に消える傾向があります。肝斑の原因である女性ホルモンの分泌が、閉経を迎える50代後半から急激に減少するためです。中には更年期に差し掛かったタイミングで肝斑を発症する方もいますが、60代以降で症状が出ることはほとんどありません。
肝斑の治療は外用薬と内服薬の併用が有効

- 肝斑の治療に有効な成分
- トレチノイン
古い角質を剥がれやすくするピーリング効果と皮脂の分泌を抑える効果があり、シミ・肝斑の改善、アンチエイジングに役立ちます。 - ハイドロキノン
医薬品や美白クリームや美容液などのスキンケア化粧品に使われる成分です。メラニン色素の生成を抑えて、シミを改善します。
- トレチノインとハイドロキノンが配合されている商品
- メラケアForteクリーム
ピーリング作用があるトレチノンと漂白作用があるハイドロキノン、炎症を抑えるフランカルボン酸モメタゾンを同時に配合しています。 - コスメライトクリーム
ハイドロキノンとトレチノインが低用量に調整されており、低刺激で肌に優しいシミ治療薬です。さまざまな肌トラブルにもお使いになれます。 - トラネキサム酸が配合されている商品
- パウゼ
有効成分にトラネキサム酸を含有した飲み薬です。トラネキサム酸は、メラニン色素を作り出すメラノサイトの活性化を体の内側から抑制します。
治療法の内容 | トラネキサム酸とビタミンCの内服と、メラニンの排出を促す外用薬の併用。 |
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診察が行える診療科 | 皮膚科 美容系クリニック |
施術に使用する薬または器具 | トラネキサム酸を含む内服薬 ビタミンCを含む内服薬 メラニンの排出を促す外用薬(トレチノイン、ハイドロキノン) |
治療期間 | 約2ヶ月ほど |
肝斑の治療薬は内服タイプと軟膏タイプがあり、併用することで効果を上乗せすることができます。肝斑の治療には、メラニンの生成を抑える効果があるトラネキサム酸とビタミンCの内服と、有効成分にトレチノイン、ハイドロキノンを含む外用薬の併用が一般的になっています。
外用薬としてトレチノイン・ハイドロキノンが有効です。
トレチノインはビタミンAの誘導体でもあることから、表皮のターンオーバーと真皮におけるコラーゲンの生成を促進させる働きがあり、皮膚に塗布することで肌の若返り効果が期待できます。美容クリームなどに含有されていることも多く、肝斑の治療においては表皮と真皮の状態を整えることによる症状の改善が期待できます。
ハイドロキノンは1940年にアメリカで開発された美白剤で、安全性の高さは群を抜いており、皮膚科でも治療に使用されています。ハイドロキノンにはビタミンC誘導体の100倍の美白効果があるともいわれており、肝斑治療においては毎日の塗布でシミを薄くする効果が期待できます。
肝斑の改善率85%という効果があるメラケアForteクリームには、トレチノイン・ハイドロキノンが配合されています。これと同じ成分が配合されている治療薬には、低刺激なタイプとしてコスメライトクリームもあります。
内服薬としてトラネキサム酸が有効です。
トラネキサム酸は、もともと抗炎症薬や止血剤として使用されていた成分ですが、肝斑や蕁麻疹など症状改善の効果も確認されています。トラネキサム酸はメラニンを生成するメラノサイトに直接働きかけ、色素沈着を抑制させる効果があることから、肝斑の症状改善においても一定の効果が期待できます。
トラネキサム酸を配合した内服薬としてパウゼがあります。パウゼは経口タイプですので、血液を通って患部であるメラノサイトにしっかり届きます。
肝斑の改善率が90%という効果が実証されており、肝斑の治療にはパウゼのような内服薬が多く利用されています。
その他、検討される治療方法について。
- レーザートーニング
- ケミカルピーリング
レーザー治療は、シミの元であるメラニンを破壊することにより症状を改善させます。ですが、肝斑に従来のレーザーを使用してしまうと、刺激を強く与えすぎてしまい、症状を悪化させてしまうため注意が必要です。
肝斑に効果的なレーザー治療はレーザートーニングです。レーザートーニングは、低出力の均一なエネルギーで照射が可能なため、不要な負担をかけずにメラニンを破壊することができます。
その他に、ケミカルピーリングという治療が行われる場合もあります。薬品を使用し、古い角質を排除し、ターンオーバーの正常化を促します。
肝斑予防はストレスケアと肌を守ることが大切
- ストレスをため込まない
- 紫外線対策を欠かさず行う
- 肌に余計な刺激を与えない
肝斑の予防には、正常な女性ホルモンのバランスを保つことが大切です。ホルモンバランスを崩す要因となるのがストレスです。適度な運動や趣味など自分に合った方法でストレスを発散したり、十分な睡眠時間を確保することを意識的に実践しましょう。
通常のシミと同様の紫外線対策も、肝斑の予防に有効です。紫外線は肝斑の誘因となるだけでなく、症状を悪化させます。屋外に出る際には、日焼け止めクリームや日傘、帽子、サングラスなどで紫外線対策を行いましょう。
肌をこすると、刺激によりメラニン色素を生成してしまいます。洗顔の際はたっぷりの泡で包むように洗うなど、毎日の肌への負担を減らすことが予防に繋がります。